肩こり・首のこり、頚椎症、頚腕症候群

首痛・肩こり

頚椎は、頭(スイカの重さ、4~6kgくらい)を支える一方、脊髄を保護しつつ、腕を上方へ引き上げるという多様な機能を担っています。そのため、頚椎疾患の症状は、多岐にわたり首・肩・上肢・下肢の痛みや痺れなど様々な症状を訴えます。
主な二大頚椎疾患として、『頚椎症』は、頚椎(椎間板や頚椎関節や靭帯)の変化による症状をいいます。頚椎の変化は、主に加齢や外傷が原因で起こります。 症状は急激に現れることなく、頚部の痛みから始まり、徐々に上肢(痛みや脱力感・疲労感など)や下肢(歩行障害や便秘・排尿障害など)の症状が出てきます。 『頚肩腕症候群』は、頚~肩~腕にかけての痛み・凝り・痺れ・筋力低下・循環障害などの症状を総称して呼び、頚椎や周辺組織の老化や長時間の作業による筋肉疲労や姿勢の悪さ、 心因性ストレスなどが原因で起こります。いわゆる肩こりや首の凝りも含まれます。

首痛・肩痛・肩こりの治療

薬物療法

症状に応じて、非ステロイド性抗炎症薬・中枢性筋弛緩薬・鎮痛薬・精神安定剤・ビタミン薬などの内服薬、貼り薬や塗り薬、漢方薬などを処方します。

神経ブロック療法

頚部神経節ブロック療法

頚部に3ヶ所存在する神経節のどれかに局所麻酔薬を注射することで、脳動脈から各脳神経にいたる多くの血管を拡張させる作用があります。脳への痛み信号の伝達を抑え、上半身の血流や自律神経を正常にすることで、首・肩痛を緩和します。

星状神経節ブロック

頚部にある星状神経節(頭・顔・首・肩・腕・胸部を支配する自律神経のかたまり)に局所麻酔薬を注射することにより、痛みの悪循環を改善します。上半身の血行を改善し痛みを和らげるだけでなく、自律神経・免疫・内分泌の中枢である脳の視床下部の機能を正常にし、体全体の自然治癒力を高める治療法なので、自律神経・免疫・内分泌系の疾患にも有効です。

上頚神経節ブロック

頚部にある上頚神経節に局所麻酔薬を注入することにより、脳動脈から各脳神経にいたる多くの血管を拡張させる作用があり、特に脳幹部の血行を改善する作用は星状神経節ブロックよりもはるかに高いと言われています。脳神経、延髄由来の様々な症状に極めて有効です。

トリガーポイント注射

頚部の圧痛点(痛みの引き金の場所=トリガーポイント)が明確な場合は、この場所に局所麻酔薬を注射することにより、痛みの悪循環を改善します。

筋膜リリース注射

筋膜に局所麻酔薬を注入することにより、硬くなったり、癒着している筋膜をはがして「筋膜性疼痛」を改善する方法です。

エコーガイド下神経ブロック注射

超音波にて、神経・血管・筋肉・関節などを、リアルタイムに画像で確認しながらより正確により有効な“ブロック注射(局所麻酔薬を使用した注射)”を実施できます。

頚胸部硬膜外ブロック

上記注射で効果があまりみられない場合、硬膜外ブロック(硬膜外腔という脊髄神経の外にある空間に局所麻酔薬を注入する)を行い、痛みの悪循環を改善します。

リハビリ(理学療法・物理療法)

理学療法士による理学療法、頚部の圧痛点・経穴にレーザー照射やSSP(針治療と同様効果)、キセノン光による温熱療法、高周波(頚部の筋肉収縮)などの物理療法が効果的です。

手技療法

●関節リリース療法
神経ブロックなどの注射で筋肉をゆるめ血行を良くしたあと、手技でさらに頚部関節の動きを良くします。注射と併用してこの手技で関節の動きを正常にすることにより、頚部関節が原因で起こる痛みやしびれを軽減します。
●関節アプローチ療法
頚部関節の動きを正常化させることにより、痛みを軽減する手技療法です。痛みの原因となる関節を手技により正常な状態に回復し、関節が原因で起こる痛みやしびれを取り除き、関節の運動障害を改善します。

心理療法

長引く肩こりや首痛には認知行動療法が有効です。
●認知行動療法
「どんな時に痛んだり不安になったりしてその時どう考えたか」、「どんな時に調子よくてその時どう考えたか」など、認知(ものごとの考え方)の歪みを修正して合理的な考え方が出来るように練習することで不安や痛みを軽減します。かたよった思考パターンを正しくしていく治療法です。悲観的思考パターンを健全な前向き思考パターンと比較し、考え方の多様性を知り楽観的思考に傾くように導きます。

「首痛・肩こり」の症例1

1来院までの経緯  (48歳 男性)

1年前朝起きたら首に激痛が走り寝違えだから安静にしていれば改善すると思っていたが、日ごとに痛みが増し首を回すことが出来ないので、整形外科を受診し湿布と痛み止めを処方された。しかし、その後頻繁に寝違えを起こすようになり、今では腕や指先の痛みと痺れが常に感じられ、日常生活が辛くてしょうがないと来院された。

2治療経過

初診時、日常生活に支障を来す程、痛みが強かったため、週1回約2ヶ月硬膜外ブロックを行って痛みが劇的に軽減されました。その後は寝違えたらすぐトリガーポイント注射を行うことで現在は痛みも痺れもなくなったと喜んで頂いています。

3考察

寝違えや首の筋違いは、普段の姿勢の悪さや疲労の蓄積による血行不良や筋肉の硬直によって起こるので、寝違え直後は、血行を良くして筋肉を和らげるトリガーポイント注射が大きな効果を示します。しかし、慢性化してしまった頚椎症(椎間板や頚椎関節などの変化)による痛みや痺れには、痛みの悪循環を断つ硬膜外ブロック注射が非常に有効となります。

「首痛・肩こり」の症例2

1来院までの経緯  (52歳 女性)

長年、肩こりと頭痛に悩まされ来院されました。職場で神経を使うことが多く、夜勤もあり、人間関係のストレスも重なって、肩こり以外に頭痛も毎日起こる状態で、ひどい時は吐き気や嘔吐があるとのことでした。毎日鎮痛剤を服用し色々な病院や整体などを転々としたが、5年間症状が改善されず、ひどくなる一方なので、当院がペインクリニックと心療内科の両面からアプローチが可能と知り、来院されました。

2治療経過

初診時、星状神経節ブロック注射と当院心療内科心理療法を週1ペースで約3ヶ月間行うことで、ひどい頭痛と吐き気が軽快されました。その後、肩こりがひどくなる前に週1~2回トリガーポイント注射を行うことにより、長年の肩こりからも解消されたと喜んで頂き、継続治療されてます。

3考察

肩こりはストレートネックよりも実際は筋肉疲労による血行不良や関節の機能異常が筋肉収縮を引き起こすことにより生じると言われます。更に、ストレスなどで自律神経のバランスが崩れ血液循環が滞ることで肩こりが悪化するので、血流改善と自律神経のバランスを整える星状神経節ブロックは慢性化した肩こりや頭痛に非常に効果的です。心因的肩こりには当院心療内科で行う自律神経を調整する心理療法が有効です。

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