慢性疼痛

慢性疼痛とは?

慢性疼痛とは、病気やけが等が原因で治るであろうとされている期間を1ヶ月以上過ぎても継続する痛みまたは、数か月から数年の間隔で反復する痛みのことです。
慢性疼痛を抱えている人は、全国に約約2,700万人(5人に1人)いると推定され、その約7割が「痛みがあっても我慢するべき」と考え、通院経験者の約4割が複数回通院先を変更しているというデータもあります。慢性疼痛は、長期休職の原因・人間関係に影響など個人的な問題だけでなく、生産性・医療費など社会的にも大きな問題です。当院では、慢性疼痛の治療を行っています。あきらめず受診しましょう。

慢性疼痛のサイクル

痛みが長期間続くと、痛みに対する否定的な「感情」や自分自身を否定するような「思考」が現れます。痛みが続くので「活動」が低下し筋肉は弱くなり、さらに全身状態が悪化する、という“痛みを悪化させるサイクル”が生じます。研究によると、人の「感情・思考・活動」は疼痛に大きく影響し、否定的な感情や思考があると疼痛に注意が向きがちになり、その結果、さらに疼痛を感じ易くなることがわかっています。慢性疼痛を抱えている人は、まずは「感情・思考・活動」がいかに痛みに影響しているかを知ることが、「慢性疼痛のサイクル」を断ち切るために非常に重要となります。

慢性疼痛の治療

“痛み”や“不安“は、脳を敏感にし、結果的に痛みや不安をさらに強めるという悪循環が生じます。これら「脳の中のシステム変調」で起きた痛みや不安に対して、脳に働きかける心療内科で処方される薬や認知行動療法や自律訓練法などの心理療法や遠絡・整膚・EFT・シラク療法などの手技療法が非常に効果的です。体の痛みなのに心理療法?「私の痛みは心の問題じゃない!」 と思うかもしれませんが精神療法といっても慢性痛が 「心の病気」 と言う訳ではありません。体の痛みを感じるのは脳であり、脳の認識が心です。脳と体は相互に影響を及ぼし合っているので脳が関係しない痛みはありません。慢性疼痛や不安が強まると痛みも強くなるという方は、どうぞお気軽にご相談ください。

薬物療法

脳内システムの変調に有効な心療内科で処方される薬が“慢性疼痛”に非常に有効です。脳内システム変調による痛みや不安には、抗うつ薬・抗てんかん薬・抗不安薬が有効のため、当院では心療内科を併設し、幅広く使用しています。

手技療法

●遠絡療法(ENRAC療法)
体の二点を同時に押すことにより、元のきれいな生体の流れを取り戻し、人間が本来持つ治癒力を有効に引き出します。生体の流れを良くすることで、身体の痛み・重み・しびれを取り除く治療法です。また、自律神経のバランスを調整し、不定愁訴を改善します。
●整膚療法
整膚とは皮膚を整え、血液・リンパの流れを良くし、筋肉・内臓・自律神経に良い影響を与える優しいマッサージです。病気の改善やリラクゼーション、健康維持に役立つ手技療法です。皮膚を優しく手指で気持ちよくつまんで引っ張ることで皮下組織が陰圧状態になり、血液やリンパの流れを良くして老廃物を洗い流す治療法です。
●アロマセラピー
アロマオイルを使用したトリートメントにより心と身体を癒し、ストレスで緊張した神経と筋肉をリラックスさせます。リンパの流れを良くすると共に自律神経のバランスを整え、免疫力を高め、筋肉のこわばりを緩めます。

心理療法

●認知行動療法
「どんな時に痛んだり不安になったりしてその時どう考えたか」、「どんな時に調子よくてその時どう考えたか」など、認知(ものごとの考え方)の歪みを修正して合理的な考え方が出来るように練習することで不安や痛みを軽減します。かたよった思考パターンを正しくしていく治療法です。悲観的思考パターンを健全な前向き思考パターンと比較し、考え方の多様性を知り楽観的思考に傾くように導きます。

●自律訓練法
心身をリラックスさせる自己調整法です。心身の緊張を解きほぐし、自律神経の働きを回復し、体の不調を整えます。

 

●腹式呼吸法
痛みや不安があると人は浅く早い呼吸をする傾向にあります。それがまた新たな身体症状を生み出す引き金になります。深くゆったりした呼吸をお腹でする事で痛みや不安を和らげることができます。

慢性疼痛の種類

慢性疼痛には以下のような種類があります。

1炎症や腫瘍などの病変が原因となっておこる痛み

2痛みを伝える神経の障害によっておこる痛み

3自律神経系の不調や筋肉が緊張することによっておこる痛み

4疼痛の存在でなんらかの報酬が得られ、そのために持続する痛み

5うつ病や転換性障害などの精神疾患によっておこる痛み

慢性疼痛の治療

上記のなかで④や⑤のタイプの痛みは通常のペインの治療ではなかなか改善されず、抗うつ薬や抗不安薬などの薬物療法や精神療法が必要となります。
③タイプの痛みも不安や緊張などメンタル的なことが大きく関与しているため、心療内科の薬や治療の効果が期待できます。
①や②タイプの痛みは原因となる疾患の治療が優先されます。一部の抗うつ薬や抗てんかん薬には、疼痛軽減作用があるため、他のペインの治療とあわせて使用することで、より痛みを和らげる効果があります。
気になる症状がおありでしたらどうぞご相談ください。

痛みはコントロールすることが可能

人が感じる痛みの強さは、生じている体の傷の量に直接的に関連しているという考え方がありますが、この理論では痛みは傷が治ればなくなるはずです。しかし、この理論に当てはまらないことがいくつもあります。そこで、体の傷から脳に送られてくる痛みの情報量は「感情・思考・活動」などの色々な要素によって調整されるという考え方ができました。痛みが長期間続くと、痛みに対する否定的な「感情」や自分自身を否定するような「思考」が現れます。否定的な感情や思考があると疼痛に注意が向きがちになり、その結果、さらに疼痛を感じ易くなります。他方、日常生活で常にストレスを感じている方の中には原因不明の痛みなど身体の不調を訴えられる方もおり、人の「感情・思考・活動」は疼痛に大きく影響します。多くの方は、痛みはコントロールできないと考えていますが、慢性疼痛の痛みは「感情・思考・活動」により増減することから「感情・思考・活動」をうまく取り扱うことによって痛みはコントロール可能であることがわかります。長期間続く痛みは大変苦しいものですが、まずは、痛みが自分のコントロール下にあるということを認識することが重要です。

痛みの伝達や痛みの感じ方に影響をあたえるもの

「痛みはあってはいけない」、「痛みをゼロにしなければならない」といった考えや「痛みが出ないため強まらないためにじっと横になっていよう」といった行動は、不安の増強や痛みへの意識の集中につながり、さらに痛みを悪化させます。
下記を参考に今の自分の状況を振り返り当てはまっていると思うもので、自分が主体となるところは、少しずつ変化させることを試みてみましょう。

痛みを伝え易くし、敏感にするもの

  • 萎縮性の変化、筋緊張、薬物乱用。
  • 痛みへの注意(=痛みへの意識の集中)。
  • 痛みは制御できないものという考え。
  • 不安・恐怖、怒り、うつ。
  • 過剰・過小な活動(少食・不健康行為・公私の不均衡)
  • 家族や友人からほとんど支援がない。あなたの痛みに注目しすぎたり、あなたを過剰に守ろうとする人。

痛みを伝えにくくし、鈍感にするもの

  • 薬、手術、筋緊張の減少。
  • 気晴らし・外に意識を集中させること。
  • 痛みは制御できるという考え、予測管理可能という信念。
  • 気分の安定・リラックス・穏やかな気持ち・前向きな気分。
  • 適度な活動・前向きな健康習慣・公私の活動の調和。
  • 他者からの支援、家族や友人の適度な関わり、‘適度な活動’を維持するように他者から勇気づけられること。

“腰痛”を例に考えてみましょう!

痛みの信号は、背骨の中の神経を伝って脳の中の痛みを判断するところへ伝えられます。『腰→神経→脳』。実は、痛みの強さを判定しているのは脳です。なので、痛みを感じる強さには、腰の病気やケガの程度の他に「神経の痛みの伝え易さ」、「脳の痛みに対する敏感さ」が大きく関わっています。この神経や脳が関わっている痛みの部分を“心因性”とも言います。“心因性”の痛みの部分は、決して“気のせい”という意味ではなく、感じる痛みは確かなものですし、逆に“心因性”であればこそ、どんなひどい痛みにもなり得ます。当院では痛みをコントロールすることにより「慢性疼痛のサイクル」を断ち切る方法を指導しています。ぜひ受診下さい。

慢性疼痛にならないためにどうしたら良いか?

「脳が“痛みグセ”を覚えてしまう前に治療しましょう!」
1.かかせないのは早期治療
当院では、治療する際、出来るだけ早期に痛みを取るようにしています。その理由についてお話していきたいと思います。
2.痛みの慢性化
痛みがあると血管が収縮して、筋肉が緊張します。その結果、血液の流れが悪くなり、痛みを引き起こす物質が生じます。これを「痛みの悪循環」と呼びます。「痛みの悪循環」が続くと痛みは異常を知らせる“有益な存在”から“不必要な存在”になります。さらに痛みが続くと、“有害な存在”になります。これが『痛みの慢性化』です。痛みの慢性化を引き起こす原因として、以下の二つが挙げられます。
3.痛みの記憶~“痛みグセ”~
痛みの慢性化を引き起こす一つめの原因は、「痛みの記憶」です。痛みは、体に起こっている異常を知らせるシグナルであるため、脳は、その痛みを忘れないように記憶するようになります。痛みの信号は、症状が長引くほど脳に記憶されてしまいます。「痛みの記憶」のことを、当院では、『痛みグセ』という言葉を使って説明しています。脳に『痛みグセ』がつかないようにするためには、脳が痛みを記憶してしまう前に取り去ることが肝心です。
4.心の落ち込み
痛みの慢性化を引き起こす二つ目の原因は『心の落ち込み』です。不安や怒りといった悲観的な感情を持っている時、脳は、脊髄の門を開いて、痛みに関する信号を多く通してしまうのです。逆に、楽観的な感情を持っている時は、脊髄の門を閉じて、痛みの信号を制限してくれます。このような脳の仕組みを考えると、自分で痛みをコントロールするのは、決して不可能ではないということがわかるでしょう。不安や怒りを出来るだけ持たない生活をすることで、痛みは和らいでいきます。
5痛みに執着しない脳を作る
痛みに対して、悲観的な感情を持つ患者様は、痛みを強く感じやすく、治療効果も低下します。心と体は、お互いに強く影響し合っています。又、脳が‘痛みグセ’を記憶する前に痛みを消すことが大事です。そのためには、初期の対処を万全にすることです。『痛みに執着しない脳を作ること』が慢性の痛みを克服するためのカギになります。

帯状疱疹後神経痛を例に解説します!

帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹による痛みが起こって、どれだけ早く痛みを軽減できるかどうかで、その後の状態がまったく変わってしまいます。治療の遅れによって、痛みを軽減できる割合が少なくなったり、痛みを完全に取り除くことが困難になったりします。‘ひどい痛みを伴う帯状疱疹’や‘帯状疱疹後神経痛’と診断されたら、出来るだけ早期に、ペインクリニックにご来院ください。初期の段階から、ペインクリニックを受診することで、帯状疱疹後神経痛の長期化を防ぐことが出来ます。

慢性疼痛とパニック症状の共通点

●原因の共通点
「慢性疼痛で痛みの強さを判定しているのは脳」で“脳の痛みの敏感さを強めるもの”に“不安・恐怖・怒り・うつ等の感情”があります。“慢性疼痛”と“パニック”はどちらも脳のシステムの変調により起こります。
●症状の共通点
パニックは何度も辛い‘パニック発作’を経験したために過去にパニック発作が起きた場所に行くと‘またあの恐ろしい発作が起きたらどうしよう’という強い不安(予期不安)が生じます。
慢性疼痛も過去に激しい痛みを感じた場所に行くことやその状況を考えることで、‘またあの恐ろしい激痛が起きたらどうしよう’という不安が生じます。
パニックの予期不安に似ている慢性疼痛の不安は、脳を敏感にし、結果的に痛みを強めるという悪循環が生じます。又、不安に思うからこそネット等で色々調べ、怖い情報を読むと不安が強まり、さらに痛みが強まることもあります。
●治療の共通点
慢性疼痛やパニックは、最初は不安が痛みやパニックの要因であるとは思っていない場合が多く、不安が疼痛やパニック症状に関係していると理解し、その対処法を身につけると、痛みやパニック障害が改善していきます。

心理療法

●認知行動療法
「どんな時に痛んだり不安になったりしてその時どう考えたか」、「どんな時に調子よくてその時どう考えたか」など、認知(ものごとの考え方)の歪みを修正して合理的な考え方が出来るように練習することで不安や痛みを軽減します。かたよった思考パターンを正しくしていく治療法です。悲観的思考パターンを健全な前向き思考パターンと比較し、考え方の多様性を知り楽観的思考に傾くように導きます。
●自律訓練法
心身をリラックスさせる自己調整法です。心身の緊張を解きほぐし、自律神経の働きを回復し、体の不調を整えます。
●EFT療法
問題に関連するフレーズを言いながら、顔や胸周辺のツボを軽く叩くことで体のエネルギーを整え、感情的な苦痛やストレス、精神的・肉体的痛みを解消するエネルギー療法です。
●腹式呼吸法
痛みや不安があると人は浅く早い呼吸をする傾向にあります。それがまた新たな身体症状を生み出す引き金になります。深くゆったりした呼吸をお腹でする事で痛みや不安を和らげることができます。

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